私はと言えば、紫野さんの胸にぎゅうぅっとしがみついて頭を振って子供のようにイヤイヤをするのが精一杯だ。



「俺じゃないです。やらかしたのは、翔ですよ」

「翔が?何を……?」

「さあ、ね。いずれにしても、理由は分からないけど翔も狙ってんのは確からしいんで。どうせアイツの事だから短絡的な手段に出たんでしょうけど」



意味分かんないけど短絡的過ぎるだろ!


何だよ、いきなりキスって!思い出すだけでも気持ち悪いし涙が出るわ!



「紗凪ちゃんの分の晩飯、後で部屋に持って来てあげるよ」


紫野さんの優しい声が聞こえてきて、思わず伏せてた顔を上げてみた。


「……天も今日は紗凪ちゃんから離れときなよ。こんなに怖がってるだろ?」

「……そうですね。来生さん、明日また様子を見に来るから」



何か言いたげな様子で、秦野君は去って行った。