言葉もなく睨み合う事数10秒。……いや。


睨み付けていたのは私の方で、赤間君は切ないような瞳で私を見つめている。


「……お前今、彼氏いんの?」



腐女子に彼氏がいるわけねーだろ!? 腐女子の存在意義を舐めんなよ!


しかしコイツマジで頭大丈夫か!? つーか何がしたいんだ!?



「……やっぱお前、‘さな’だ。昔よく遊んだの、俺まだ覚えてる……」


早く忘れろ!


「……ファーストキス…って、覚えてる?幼稚園の階段の下で俺からやったの」



覚えてねーよ!

ノーマルに入れ込んでた過去なんか、消えてしまえばいいと思うよ!

つーかマジで手を離せ!!


「……紗凪……」



………え。なにこの唇にふにっとした感触は。


は?まさか。



赤間君に、キス…されちまった……。




うっっ…げぇぇぇぇ!!!! 信じらんない!!


ノーマルにキスされたよぉ!! こんなんなら、まだ奈乃とキスしてた方が許せるよ!!



「全部片付けてから、お前んとこ行くから。待ってろよ……」


片付けなくていいし来なくてもいい!



へたりこんだ放心状態の私を残して、赤間君が扉をパタリと閉めて出ていった。