ようやく我に還って自室に入ると、机の上に置きっぱなしだった携帯が着信を知らせている。



いつもお世話になっている『COSPLUS 』の編集担当の若槻さんからだ。


若槻さんは20代後半の美人さん。


それに、高一の夏休みに遊びに行った秋葉原で、私と奈乃をコスプレ雑誌のモデルにスカウトしたのもこの人だ。



何だろ?この前の写真を撮り直したいとか、そんなとこかな?



なんら疑いもせず、携帯の通話キーを押した。



「はい、もしもし?若槻さんですか?」

『ああ、紗凪ちゃん?この前はお疲れ様ー』


うん、これは一般的なご挨拶。


で、そのご用件は如何なもので?


『奈乃ちゃんにこないだ聞いたんだけどね、紗凪ちゃんてば男子寮の経営者になったんだって?』

「ええ、まあ……」



奈乃め、余計な事を教えやがって!!!!


若槻さんの次の言葉を聞きたくない。多分アレだろう。

てーか、アレしか考えられない。