眼鏡を外して涙を拭いながら部屋に戻ると、ドアの前には充さんと紫野さんが待ち構えていらっしゃる。


「よぉ。どうよ、首尾は?」


充さんが気軽に声をかけてくれたからか、今までの湿っぽくてジメジメした自分の中の気持ちが、不思議にカラリと晴れていく。



「んと。秦野君と明日図書館で一緒に勉強することになりました。あと、通学も同じ電車で登校しようね的な展開にですね」

「ほぉ。上出来じゃん」


充さんがニヤリと口角を上げた、まさにその時。


「……やっぱり、充さんと紫野さんが絡んでましたね?」


私の背後から、地を這うような秦野君の低い声が聞こえてしまった。


え?え?どうすればいいのこれ?


「私は何も知りません」みたいに、しらばっくれればいいの?

「この二人に……」とか責任転嫁?いやいや、それば駄目。まがりなりにもこの二人にそんな事できない。


けど。



「……なんだ、天。気付いてたんだ?」


紫野さんが意味ありげな視線を秦野君に送った。


「別に良いですけど。俺はアンタ達の思惑には乗らないで落としますから」


落とす?落とすって何を?


「随分余裕かましてねぇか、天?言っとくがこの天然娘、滅茶苦茶難関なんだけど。分かってんの?」


充さんはそう言いながら、私の方をチラリと見た。


へ!? 天然娘…って私の事?なんで?