いずれにしても、私が肉を食べれなくなったのは事実だ。


お父さんとお母さんの火葬を経て、全く食べられなくなってしまった。


あれから数ヵ月経った今でも、肉の匂いを嗅いだだけでも吐きたくなるし、胃が痛くなる。



体が焼かれて骨だけになってしまったお父さんとお母さん。



それを思い出すから、今でも肉は食べられない。



「……無理に食べなくてもいいんだよ」


私の気持ちを見透かしたように、一さんがまた一つチョコを勧めてくれた。


秦野君も何か思うところがあるのか、黙ってチョコレートを見つめている。


「食べられるものを少しずつ食べていけば。そうやって紗凪ちゃんが元気になっていければ、いいよね」

「あの……」


大丈夫、分かってる。


そんな表情で一さんは私の頭を撫でてくれた。


なんだろ。どうして涙が出てくるんだろ。


一さんの手はあったかくて、心地好い。






このままずっと、こうして微睡んでいたいよぉ……。



「つか、チョコも大事だけどそれより飯!!!!」



気持ちが良い時間と空間は、リア充の空気を読まない一言で破られた。





……っっアンタホントに空気読めない男だね!!



頭に来たからわざと乱暴に勉強道具を揃え、足音も荒く私は食堂を後にした。