「着いたけど、何にするか決めた?」
ファストフード店の前で一さん達が私達を呼んでいる。
「俺はチーズバーガーのセットで。コーヒー」
「…私はフィッシュバーガーのポテトSセットで。飲み物はレモンティーでお願いします」
「翔は……。焼き肉バーガーとチリドッグだっけか?」
「ポテトはLで。コーラ」
一さんがカウンターで注文する間、私達は席を取って待っていた。
私の隣に秦野君が座ると、不機嫌そうに赤間君が向かいに座った。
「秦野君と赤間君は、一緒のクラスなんですか?」
一応社交辞令として、聞いてみた。
「いや、一年の時は別々だったけど、二、三年も多分別々だろうな。翔はスポーツ特待だから、そっちのクラスだろうし。俺は進学組だし」
「すごいですね。もしかして、もう志望校とか決めてるんですか?秦野君は」
「まぁ。大体ね」
秦野君との会話は、無理して背伸びしないこの《間》がなんだかとても心地好い。
文学部っていう、書物に囲まれたような雰囲気が、もしかしたら私と通じるものがあるのかなぁ……。
リアルな《異性》に慣れていない私にとっては、珍しく同年代でも無理なく話せる相手かも知れない。
「そういう来生さんは、将来は決めてるの?」
「私も進学です。付属の短大に」
私が通う蘭華学園には短大があるから、高校を卒業したら、そこへ進学するつもりだ。
「短大まで女子校なの?男と出会う機会って、あんまり無いでしょ?」
若干憐れみを含んだ眼差しを向ける秦野君に、肩を竦めるしか反論は出来ない。
「全くですね。誰か好い人がいれば良いんですけどね」
これも一応社交辞令。別にそういう出会いは求めてないし。