「翔は?」

「ノートとか要らなくね?英語」

「……覚えてないのか?」

「教科書に書いてるから、それで。あと友達に聞いたりとか?」

「あのな、英語の授業では構文や精読、点の取り方は教えないから、基本例文の暗記ぐらいはやらないと。だからほら、何かノートを持ってこい」




リア充はブツブツ文句を言いつつ食堂を出ていった。もう戻ってくんな。


一さんは私の英語のノートを至極真剣にチェックして、あやふやな箇所を何ヵ所か指摘し、丁寧に説明してくれた。




一さんのその手元には、昨日あの本屋で買ったらしい、5教科の参考書が置いてあるのを今更ながらに気が付いたし。


「あの、一さん?」

ん?と顔を上げた一さんに疑問をぶつける。


「高二の参考書、わざわざ買ったんですか……?」

「何故かうちの寮には高二が三人もいるからね。もしかしたら使うんじゃないかと思って」

「ありがとう、ございます……」

「いや、紗凪ちゃんだけじゃ、ないし」




私がもう一度礼を告げようとしたら、食堂の扉が開いて、リア充、それに秦野君が一緒に入ってきた。


「なんだ。天も一緒にやるか?」

一さんが楽しそうに秦野君に言うと、秦野君は数学の教科書を軽く上げて見せた。