「紗凪ちゃん、春休みの宿題はもう終わった?」


一さんがそんな事を聞きながら、今日は私の前の席に腰掛けた。


「引っ越しとかあったから、実ははまだ何もやってないんです。今日から真面目にやらないと……」


うちの学校は、長期休みでなくても課題の量は半端ない。夏休みなんて全然休みじゃないじゃん、って感じだったし。


「なら、朝食の後、ここで勉強しようか?俺が教えられるところは教えるし。紗凪ちゃんはどの教科が苦手?」

「数学と英語、です」


一さんの話し方って、どことなく《先生》っぽいんだと、はたと気付いた。それもあるから、一さんとは警戒しないで会話ができるのかな?