その証拠に今の私の格好と言えば、馬の尻尾のように長く黒い髪をだらりと後ろで一つに束ね、目を隠すように今時どこで売ってるのか分からないような瓶底眼鏡を掛けている。


しかも腰丈まである、お洒落とは無縁の無地のトレーナーにだぼついたジーンズ。



「……落ち込みたい気持ちは分かるけどさ、お洒落してみたら気分も変わるかも知れないよ?目が悪いの?瓶底眼鏡なんてやめて、コンタクトにしたら……」



私の眼鏡を顔から取った優子さんが固まった。


「……なんで顔隠すの!紗凪ちゃんの顔、すっごく可愛いじゃない!睫毛は長いし目鼻立ちははっきりしてるし!勿体ないよ!」


力説する優子さんの手から慌てて眼鏡を取り返し、私はそれをまた掛け直した。


「視力は良いです。これはカモフラ。目立たない方が都合が良いんです。だから、わざとこんな格好してるの」


勿体ないねぇ、と言う優子さんの言葉に私は苦笑した。きっと優子さんは、私が両親の事で落ち込んでるからこんな格好をしてるんだろうと、軽く予想がついたからだ。



……違うんだ、優子さん。私のカモフラはそのせいじゃないと、声に出して言ってしまいたい。