「……んー。本屋で、他に何か買わなきゃいけなかったような気がする……」

「……私もそう思う……」




何だっけ?




ふと見ると、特設コーナーが目に付いた。


今の時期、特設コーナーにあるものと言えば……。



「参考書!!」

「それだ!!」



そうだった。うちの学校の偏差値はそこそこ高いから、予習・復習の為の参考書やワークテキストは必需品だし。



「えぇと、数学Ⅱとあと…」

「げ、参考書たかっ!2000円とかあり得なくね?これでホモ本何冊買えると思うよ?」

「多分3冊。私数学の参考書を買うからさ、奈乃が英語買わない?つか、さっき大量に買いすぎて金ねぇ」

「右に同じ」

「では」


私と奈乃が同時に参考書に手を伸ばしたら、私の手と誰かの手が重なった。


「あっ…。すみません」



直ぐ様謝罪して私が手を引っ込めると、相手も同じように手を引いて謝罪した。


「いえ、こちらこそ」


ん?この耳障りの良い低い声には聞き覚えがあるぞ?


誰だと相手を見てみれば、そこには眉目秀麗な一さんが立っていた。