「『漆黒のキセキ』も今日発売なんだよねぇ」

エスカレーターを駆け登りながら、私が今日買うつもりの本の名前を言うと奈乃が振り替えって目を輝かせた。

「バスケ物のヤツだよね。読み終わったらそれ貸して?」

「いーよ。じゃあ、奈乃が買う『Knocking on the water』も、読んだら貸してね」

「おっけ」


「て言うか私ら、わざわざエスカレーター駆け登る意味ってなくね?」


今から本屋に買いに行こうとしてるのは、平積みになってる人気コミックスでも流行りの小説でもないのにさ。

「だって仕入れ数が少なかったら買えないかもじゃん!おら急げごるぁ!」



うん。それきっと大丈夫。



「だって多分、本とタイトルだけで元ネタ分かる人って、私ら以外にいないと思うよ」






そして新たなコレクション(腐女子にとってはただの《本》ではない。コレクションなのだ)を、見事大量にゲットした私達。



でも何か忘れてないか?