正直に言うと、私は元々女子校という土壌で育ってきたから男の人とは知り合う機会も無かったし、話すことも殆どなかった。


だから中学校の時に知った、二次元の世界の異性にハマるのはあっという間だったけど。



両親が亡くなってからは、余計にその傾向が強まったと言えるかも知れない。





だって、二次元のキャラクターは、死なないから。





ページを開けば。ゲームを起動させれば。いつでもどこでも彼等に会えるのだから。


彼等は私を裏切らない。



その終わりのない夢の世界に、私はずっと居たいんだ。




だって、もし将来私が結婚しても、一番に見せたいお父さんはもうここにはいない。お母さんには恋バナを一回ぐらい相談してみたかったのに。



晴れの姿に「綺麗だよ」って言ってくれる人は、もういない。


同性として、アドバイスをくれるはずの人も、もういない。



だったら、このままここで、夢を見てたって良いじゃないか。




嫌な事から私を守ってくれる、フワフワしたこの無意識の中に、私は自分を閉じ込めた。




「……ちゃん、紗凪ちゃん。大丈夫……?」


一さんに肩を揺すられて、自分が泣いてる事に気が付いた。


「すみません、せっかくの楽しい雰囲気を……。私、もう出掛けますね」


ご馳走さまでした、と両手を合わせて食器が乗ったトレイを返却口に返し、そそくさと食堂を後にした。


皆から注がれる、悼むようで哀れむような視線には、気がつかない振りをして。