「……落ち込んでんだもんな。しょうがねぇよな……」

私の言葉を聞いていたらしい宏樹さんが、ナイスフォローを入れてくれた。

さすが寮長、空気が読める男!




「大家さん、いつも優しかったもんね」

遥斗さんが言うと、今までの清々しさはどこへやらかに吹っ飛んで、沈痛な空気が食堂を支配してしまった。




皆箸置いちゃったよ。え、これどうしよう?




「俺前さ、明け方帰ってきたのに、わざわざ鍵を開けて中に入れてくれたんだよな。旦那さんが」

遥斗さんは、そう続けた。


「俺が寮費をギリギリまで出さなかった時も、小言一つ言わなかったしな」

と、チャラ男。


「俺が風邪引いた時は、奥さんがわざわざお粥作って運んできてくれたっけ」

一さんが、目を細めて思い出したように呟いた。




ああ。


お父さんとお母さん、ここの寮生皆の事も、実の息子のように可愛がってたんだ。



私は一人っ子だから、《お兄さん》というのがどんな存在かも知らないし、分からない。大体《兄弟姉妹》というものも知らないし。