「紗凪ちゃんさ、『夢見る桜』歌えるよね?一緒に歌おう?」

「歌う歌う!! 歌お、秦野君!!!!」


『夢見る桜』は、人気アニメのオープニング曲だ。しかも私の持ち歌だし!


秦野君にマイクを差し出されて、気持ちよく歌い始める。うん、調子ノッてきたぞ。


それからメドレーで人気動画曲を秦野君と振り付きで歌い続けて、マイクを離さなかった。




寮生さん達はさっきのボーリングで体を動かしたからか、歌うより専ら食べる事に専念している。


持ち歌を歌えた事に満足した私が充さんの横に座ると、同時に流れ出したアキバ系アイドルの曲。


……誰だ、こんなの入れた奴?まさか優子さん達?



ばっと優子さん達の方を見ると、眼前にマイクが付き出された。


「……せっかくその服着てるんだから、これ歌えよ」



そう言う赤間君の表情は、何故か不機嫌そうに見える。


言い方にもトゲがあるし、マジで何なの?コイツ。


「翔のリクエストだってよ。オラ歌え」


充さんが、それはそれは底意地が悪そうな笑顔で私を見ている。



くーっ!!!! こんなの…こんなの…。


拒否したかったのに、寮生さん達の目が「歌え」と訴えかけているのは一目瞭然。



ここで頑なに拒否したら、ノリが悪い奴って思われるじゃん。



しょうがない一曲だけは付き合うか、と諦めて、座ったままのテンションがた落ちのまま、低い声で歌い始めた。


だけど、ノリが良い曲なので最後ははしゃいで歌ってたんだけどさ。



何事も空気を読むのは大事なことなんだよね、うん。