……あ、これ。


書いたの誰だっけ?



えーと、与謝野明子…じゃなくて、谷川俊太郎…でもなくて。


誰だっけ?



「宮沢賢治の『雨ニモマケズ』。知ってる?」


はあ。タイトルだけは。



「【 雨にも負けず 風にも負けず】……その英訳文。英訳にも色々あるけど、I am strong in the wind. ってとこがね、紗凪ちゃんに届けばいいね」


……I am strong in the wind.


風にも負けず?


ん?どゆ意味?


一さんが言ってる事が今一つ理解できずに小首を傾げる私の頭にぽん、と手を乗せると、一さんは話題を変えてきた。



「紗凪ちゃんの歓迎会、明日の夕方5時にボーリング場とカラオケに予約を入れといたからね。気楽に行こう?」

「あ、はい。ありがとうございます」


ボーリングはあんまり得意じゃないし、仲間内で集まるのとは違うからカラオケじゃあんまり持ち歌は歌えそうにないな。


だけど寮生さん達が私の為に開いてくれる歓迎会だし、ここは好意に甘えよう。



一さんに、へにゃりと笑顔を返すと、一さんもにこりと笑って食堂を出ていった。