その隙に、スイーツコーナーから春の新商品のクレープを一つ手に取る。

莓とチョコと生クリームがふんだんに使われた、見た目も美味しそうなふんわりクレープ。



……けどさ、スイーツ一つだけ買うのもなんか虚しいよね。


ジュースも欲しいなぁ…と思ってペットボトルの棚の前に移動したら、赤間君が着いてきていた。


……まだいたのか、お前。


「どれ飲むんだよ?」


今までさんざん悪態ついた挙げ句にキスまでしてきた罪悪感からか、赤間君は然り気に優しく声をかけてきた。


けどもう騙されないもんね。


赤間君を無視して、棚から緑茶のペットボトルを取り出しレジに向かった。



だけどレジ待ちに並んでる私の横に、でかいコーラのボトルを抱えた赤間君がちゃっかり隣に並んでるし。


ちょ、おま、邪魔!


そしていざ会計をする時になって、私のクレープやお茶を強奪し、私に否やを言わせる隙も見せず「会計は一緒に」なんて店員さんに告げた。



……後が怖いから奢ってもらいたくなんかないのに!


私の手にクレープが入ったビニール袋を押し付けると、赤間君が私の隣に立って歩きだす。



帰り道は二人とも終始無言のまま。


何の罰ゲームよこれ。


私を置いて、さっさと去ね。



「……風呂上がりに部屋の窓から、お前が外に出るとこが見えたから」


だから何だよ?


「……もしかしたら、夜道で危ない目に合うんじゃないかと思って。心配……したから」




てーと何か?赤間君は、風呂上がりに髪も乾かさず、私の後を追いかけて来た…ってこと?


今聞いたのは自惚れとか聞き間違いじゃなくて?



……うーん。赤間君とは、掛け合い漫才程度の付き合いならしてみても楽しいかも知れないけど。ボケ役やるなら漫才ぐらいには付き合うけどな。




寮まで着くと、少し躊躇いながら、「送ってくれて、ありがと」とお礼を言う。



素っ気なく言ったつもりだったのに、それだけで赤間君が晴れやかな笑顔を見せる。



……鈍感属性に勘違い属性まで着いてるのか。



ある意味、幸せな奴だと呆れて首を振って、私は赤間君に別れを告げた。