明瞭な口調で光俊が会話をする相手は、勤務先の会社の人間に違いなかった。


通話を終えると、光俊は携帯をテーブルの上に放り出した。

肘を付き、ふうーと溜め息を吐いて、両手で頭を抱える。


光俊の様子を真彩は突っ立ったまま、ただ黙って見ていた。


夫は自分と話し合う気なのだ…ということはわかる。



「来いよ…」


顔を伏したままで光俊は言う。


「うん…」


真彩はコーナーカウンターを廻って、ダイニングチェアに座る光俊のそばに立った。



「…砂川司って、誰だ?」


光俊は上目遣いに真彩を睨むように問う。


光俊の口から、その名前を聴いた真彩は、一瞬、心臓が凍りついた。


光俊が知るはずのない名前。



「俺が気付いてないと思ってたのか?
しょっ中、そいつからメール来てるじゃねえか」


司からのメールに気付いていた、と言う光俊の言葉に真彩は驚きを隠せなかった。


「え…もしかして、光俊、
メール読んだの?」