ーー真彩、空見て…
北斗七星が綺麗に出てるよ……
真彩が車の中で黙り込んでしまったのは、理亜を心配するあまりだと司は思ったようだった。
夜間の小児救急は、休診日の多い木曜日のせいか、酷く混雑していた。
熱でぐったりした子供もいるが、
おでこに熱さましシートを貼り付けながらも、なぜか元気に走り回っている子供もいる。
その子の母親と思しき茶髪の女は、脚を組んで熱心に携帯をいじり、我が子の方をみようともしない。
救急なはずなのに…
早く医者に理亜を診てもらいたい一心の真彩は苛立つ。
なんとか司と2人分、空いているスペースを確保し、寄り添うようにして腰を下ろした。
どれくらい待つんだろう。
1時間では効かないだろう。
苦しげな呼吸の中学生らしきパジャマ姿の女の子も含めて、子供は8人ほどもいた。
理亜は病院の待合室に着くと、環境が気に入らないのか、またフギャフギャと愚図り始めた。
真彩は理亜を抱っこして、立ったり座ったりする。
「困ったなあ…どうしたら泣き止んでくれるのかなあ…」
眉根を寄せた真彩が理亜を抱いて、席を離れた隙に、病気の子供の付き添いらしい肥った父親が、真彩の座っていたスペースに座ってしまった。