八景島に到着する前、信号待ちの車の中で、司は少し照れ臭そうに言った。
真彩の目を覗き込むようにして。
先週は真彩が生理中で出来なかった。
いつもセックスをするのは、司の部屋だった。
サッシ窓に、青いチェックの安っぽいカーテンが吊り下げられた日当たりの良い八畳の洋室。
週末、真彩が訪ねるといつも掛け布団もシーツもぐちゃぐちゃで、沢山の雑誌やCDや洋服が積み上げられていた司のベッド。
それは、高身長の人用に作られたサイズのもので、これを買うまでは布団を敷き、縮こまって寝ていた、と言った。
司は酒は好きだが、煙草は吸わない。
それなのに、煙草を吸う友達の為に大きなガラスの灰皿を用意していた。
八景島から屋根のある大きな橋を渡って
、駐車場に戻る途中でのことだった。
ーーそういえば、この先にすげえいいポイントがあるんだよ。
クロダイとか釣れるんだ。
ちょっと見て行ってもいい?
釣りの好きな司は、周辺の岸壁で夜釣りをする人々の釣果を見たがった。
ーーうん、いいよ。
導かれるまま、司と手を繋いで、東京湾の出入口の方角に歩いて行く。
岸壁の脇は、海に沿って遊歩道に整備されていた。