高熱の理亜を車に乗せて、1人で小児救急へ行く。


車の運転は得意だけれど、未体験の出来事に真彩は怖じ気付いてしまう。


とにかく、理亜を抱いたままでは何も出来ない。

必死に心を奮い立たせる。


2枚の座布団を繋げた上に理亜を寝かした。


真彩から離れたのに、理亜は泣かなかった。

そのことがますます真彩の不安を煽る。


虚ろな目で、母親の真彩を見る理亜の呼吸が荒かった。


「待ってて…理亜、お医者さんのところに連れて行ってあげるからね…」


汚れたTシャツを着替え、出掛ける支度をする。


保険証、替えのオムツ、お尻拭き、もし車の中でもどした時の為に、バスタオル。
理亜の着替え。

愚図った時与える、お気に入りのパイル地で出来た小さなキリンの縫いぐるみ。


荷物をバッグに詰めながら、道順を考える。


行ったことはないけれど、救急病院の場所は大体わかる。

片側二車線ある大きな道路に面した、割に交通量の多い場所だ。


駐車場はあるのだろうか。

なかったら、コインパーキングに入れるしかない。

病院の裏手には、飲食店が立ち並ぶ。


あそこの道は、一方通行だったかもしれない…