思わず、真彩は「やだ!やめて!」と言ってしまった。


「ああっ?」


真彩の言葉に、光俊は敏感に反応した。

紺のスーツも脱がずに真彩の前に立ち塞がった。


「この頃、お前って、何かっていうといつも俺のすること嫌がるよな?
まじムカつくよ!
なんの為に俺働いてるんだよ?
お前、俺が楽して給料もらってきてるとでも思ってんの?
俺の仕事、馬鹿にしてんのかよっ」


「そんなことないよ…ゴメン。
すぐタクシー来ると思っちゃったから」


光俊の息は少し酒臭く、目が血走っていた。

真彩は彼の剣幕に怯んだ。
完全に不利になっていた。


「嘘つけ!いつも理亜のことばっかで、俺のこと邪魔者扱いしてる癖に。
俺なんかどっかに転勤になって、単身赴任でもしろって思ってんだろ!」


酒の勢いからか、光俊の怒りは自分の吐いた言葉でさらに増しているようだった。


こんな光俊は初めてで、真彩はどうしたらいいか分からず、何時の間にか、涙ぐみながら謝罪していた。


「そんなこと思ってないから…
本当ゴメン…悪かったってば….許してよ…」