7年前。
デートの定番がドライブとなって、3ヶ月が経った頃。
司は、急にミラのハンドルを握らなくなった。
真彩が駅のロータリーで待っていると、当たり前のように助手席に乗り込むようになった。
少し前まで、俺が運転するよ、と言って座席を交代したのに。
そして、助手席の窓からぼんやりと外を眺める。
自分からは何も話さず。
真彩が話し掛けても、短い返事しか返って来なかった。
ーーー思えば、その頃、司は悩んでいた時期だった。
自分の思うような仕事が出来ない職場を続けるか、見切りをつけるのか…
念願の営業課に転属になり、仕事が楽しくて仕方のない真彩と、温度差が生じてしまった。
すっかり大人の男となった司の横顔を見る。
あの時。
もう少し、親身になって、話を聴いてやれば良かったな……
それどころか、冷たい態度をとっていた。
ーーやり方次第で、仕事は楽しくなるよ……もっと、頑張りなよ!
思いやりの欠けた自分の言葉を思い出し、今になって真彩の心は、チクリと痛む。