必要最低限の家具だけで、全体的にすっきりと片付いている。
横の四畳半程の洋間に、黒いデジタルピアノが置いてあった。
(あっ…ピアノ、買ったんだあ…)
前に、渚がピアノを習いたがっていると司がメールに書いていたことを思い出した。
家財道具そのものは、良い物を置いているのに、なんとなく淋しい感じがしてしまうのは、この家の住人が父娘2人だけだと知っているせいだろうか。
前に司はメールで、兄弟のいない渚にペットでも飼ってやりたいけど、自分も忙しくて、充分な世話が出来そうもないからやめてるんだ、と書いていた。
さっき、司が床に無造作に置いた洗濯物が真彩の目に入る。
差し出がましいと思ったけれど、出来ることはやってあげたかった。
真彩は、床に正座して、洗濯物を畳み始めた。
司の下着も混じっていたけど、今更そんなのに動じるわけがない。
昔、飽きるほど見てるから、司の下着の趣味だって覚えてる。
畳みながら変わってない…と思う。