『SUNAGAWA』



白い漆喰の門柱に取り付けられた透明アクリル製の洒落た表札。


黒い門扉の向こう側にには、少し間隔を開けたコニファーの生け垣があり、屋根付きのカーポートは、余裕で車が二台停められる広さだ。


玄関脇に植えられた司と同じくらいの高さのオリーブの樹は湿った夜風に優しくそよぐ。


「すごく素敵なおうちなのね。びっくりしちゃった!」


感嘆する真彩に、司は口角を少し引き上げただけの笑顔で返す。

空いた1台分のスペースには、子供用の自転車となぜかピンク長靴がひとつだけ放置されていた。



「何度言っても、いつもこうなんだよ…」


車から降りた司は、苦笑しながら、渚の自転車を起こして、隅に寄せる。


「羨ましいな。うちなんて多分マイホームは無理だもん」


今時、親の遺産でもない限り、司の若さでこの地にこんな家を手に入れることは出来ない。

借家にしても、家賃は相当するだろう。


18歳で進学の為に沖縄から出てきた司が、このような住まいを持っていることに真彩には違和感を持つ。