「あ……」
コンビニの商品棚を見た真彩は、足りない物はそれだけではないことに気付いた。
自分の替えの下着、化粧水、クレンジング。
赤ん坊のことばかり考えていて、女は何の準備もなしに他所へ泊まることなど出来ないということを忘れていた。
おむつの他にそれらも買うと、軽く3千円を超えてしまう計算になった。
千円札がなくて、司から一万円札を受け取る。
「とりあえず、5千円借りたことにして、5千円は戻すね。必ず返すから」
真彩がいうと、
「返さなくていいよ。困った時はお互いさまだし」
司は手のひらを振って言った。
「そういうわけにはいかないよ。
なかなか会う機会もないから、あとで住所教えてね」
真彩が少しムキになると、
「次に逢う時でいいよ」
司はさらりと返し、
「これもついでに会計して…授乳が済んだら、飲めるだろ?俺、雑誌コーナー行ってくる」
抱えていた缶ビール4本とサラミや柿の種の袋を、真彩の買い物かごに入れた。