暗いのをいいことに、真彩は司の高い鼻梁の横顔をじっと見る。


濃くて形の良い眉。
長い睫毛に縁取られた漆黒の大きな瞳。


固く結ばれた少し厚ぼったい唇には、昔、何度も何度も触れた。


真彩の心は一瞬、揺らぐ。


……もしも、今夜その唇が近づいて来たら。


…本当に自分は拒否出来るのだろうか、と。


………その時はその時だ。


真彩は助手席の窓から、司の住む街並を見る。


もう、ここまで来てしまったのだ。
司を信じるしかない。



「あの…ごめん、途中でコンビニに寄ってもらっていいかな?」


走り出してすぐの信号待ちで真彩が言うと、司は「オッケー」と笑顔で言った。


「あと…それから申し訳ないんだけど、少しだけお金貸して…

少量パックの紙おむつを買いたいの。
ぱっと出てきちゃったから、なんにも用意してなくて。
お財布にお金もカードも入ってなくって…」


もじもじする真彩に、司はぷっと吹き出した。


「マジ?真彩もやるよなあ。いいよ。この先にファミマがあるよ」