「秦…だいすきっ」

「……っ俺も」







切なく笑う秦。

なんだか胸の奥で、コトンとなにか崩れた音がした。

――気づくなと、警告されてるような気がした。







「…ひまり?」

「…どうして、悲しそうなの…?」

「…え?」







聞いちゃダメ。

あたしの本能がそう言ってる。

でもあたしは聞きたくて。

…秦を悲しくさせてるのは誰なの。

あたし…?

そんな不安が拭いきれない。







「悲しくないけど?生まれつきの顔なんで」

「…っうそだよ…!」

「えー俺イケメンなはず」

「…なんではぐらかすの」

「はぐらかしてねーよ?ひまりはそれを聞きたいの?」

「…っ答えを、聞きたいの」

「…ふぅん。傷つくよ?」







冷たい瞳。

突き放すような低い声。


――傷つく…?







「なーんてな☆悲しい顔の意味、ひまりが笑ってないからかな」

「……っ//」

「おい、顔赤いぞ?」







また、そんなこと言って。

秦は、ずるいんだ。

男の子はみんな勝手でずるい。

勝手にあたしの心を盗んで。

冷たくしても優しくして、離さない。

――ズルい。







「ほら、教室戻ってーのデート行きましょうや!」

「うんっ」







ねぇ、秦。

やっぱり秦は、あたしに嘘をついてると思う。

でもあたしは聞かない。

――知らないフリを、した。