屋上で俺は落ちてくる雨を眺めていた

すさまじい数だ

俺はいままで雨を一粒ずつ認識したことはなかった
雨はまるで円循環のフィルムを見せられているような錯覚に陥らせる

けど今日は違う風に見えるんだ

俺が少し変なのかな?

雨のそれを構成しているその一粒一粒ずつがはっきりと目で確認できるし


それがなんだか哀しい

こいつらが何をやっているのかが突然、わかってしまった



皆、地面に落ちないように必死で抗っているのだ
隣りの粒よりも少しでも遅く落ちようと




必死に浮き上がろうとしているのだ
しかし重力は何も言わず


ただ次々と落としてゆくばかり
真夏にセーターを着て
みんなに笑われてるあのこ

ぼくは
Tシャツを着ていたが
下半身には何も着用していなかったので

気が合うかな?
と思って声をかけたら 警察を呼ばれた



「ソーラーカーで轢き殺すぞ!」
あなたの舐めてるアメがまずいから


わたしは殺される


あなたが殺そうと思えばいつでも殺されるわたし


こんなことを思っててももう三秒後にはわたしの脳は飛び出しているのかもしれない




すごいな
あなたは
神と区別がつかない
何もする気が起きない

与えられた
不平等に分けられた 目の前の
鋭角すぎるケーキ
かき氷で

飢えをしのいだ あの夏
何かが
間違っている
リンゴの樹に寄り掛かって

熟れた実が落ちてくるのをじっと待っていた


そりゃあ
何にもしなかったわけじゃない
祈ったりしていた


必死で
ぼくたちは
ありを
ころすことが
できる

ぼくたちは
ありを
ころさないことが
できる

ありは
ころされるか
ころされないかしか
ない

そして
それを
えらべは
しないのだ
病院の待合室にも似た空間で
ぼくらは押し黙ってソファーに座っていた
柔らかすぎて
そいつに喰われているような気さえした

『○○さん』

急に名前が呼ばれた


心臓が止まりそうになった ぼくじゃなかった
隣りの隣りに座っていた人が静かに席を立ち
奥の真っ暗な空間へと吸い込まれるように歩いていった

「カッカッカッカッ」

しばらくして
奥の部屋から
さっきの人の叫び声が聞こえてきた


さっきの人のかはわからないが どう考えたってそうに決まっている
また静かになった

もう

時間がやってきたのだ


ぼくは
次に
自分の名前が呼ばれない事を必死で祈っていた




ここにいる誰もがそうだった
放送が入り ジリジリとスピーカーからノイズが聞こえ出す
そして時給800円で雇われているやる気のない女の事務員がしゃべりだした






『○○さん』
ぼくの
おうちは
ちきゅうにあります
きみの
おうちは
ちきゅうにありますか?
だったら
ぼくと
きみとは
ともだちだね
って
おもうよ

ぼくの
すきな
ばしょは
ちきゅうだよ

きみの
すきな
ばしょも
ちきゅうかな?
だったら
ぼくと
きみとは
なかよしだよ
そう
おもうな

こうだいな
このうちゅうの
かたすみで
ぼくらはみんな
ちきゅうじん
だから
なかよく
てをとりあって


よそものがきたら
ぶっころす