しばらくして玄関のドアが勢いよく開いた。





龍馬「愛姫っ!?」






息を切らした龍馬と雷馬が飛び込んできた。






雷馬「まだなんか用ですか!?」




父「……すみませんでした…先日の御無礼お許しください…。」





お母さんも続けて頭を下げる。














父「まさか…あなた方が矢岳様、神田橋様、虹潮様、竜陰寺様だとは…。」






……言葉が出なかった。





こいつらは…




結局自分の事ばかりだ。




相手が世界に誇る名門だと知ったとたんこの態度。




龍馬「……で、なんの用ですか?」




母「……え…ですから本日は先日のお詫びに…」





雷馬「すみません………んなことできたならさっさと帰れっ!!」





雷馬がキレた。




神馬「……さ、空気が汚れますからお帰りください…。」





神馬が敬語…。




風馬「愛姫ちゃんの身体に悪いからさぁ…。」




風馬が笑ってない。







龍馬はずっと私を後ろから抱き締め首に顔を沈めてる。




父「……せ、せめて…つまらないものですが…お受け取りください。」





お父さんが差し出したのは超有名な洋菓子屋の紙袋。












あぁ…




この店は和也が大好きだったケーキ屋だ。





雷馬「……結構です。甘いものは愛姫があまり好きではないので。」





そ。私は生クリームとあんこが苦手。





きっとこの人たちは和也が美味しそうに食べる所しか見てなかったんだろう。





母「そ、そんなっ………み、皆様だけでも…」




神馬「愛姫が食べないものは俺らも食べない…だから早く帰れよ!!」





神馬と風馬が無理矢理両親の腕を引いて外に出した。






龍馬の温かい手のおかげで震えはすぐにおさまった。











安心したのもつかの間…。






……!!




息ができない………





龍馬「……!!あ、愛姫っ!!!!」





激しくなる心臓…





春宮先生が言ったことを思い出す。






次に発作がきたら…命は…






「……っ………りゅ…ま………」





龍馬「しっかりしろ!!愛姫っ!!」





泣いてるの…?





あぁ…




意識が…遠退く。












遠くから救急車のサイレンが聞こえる。





みんながなにか叫んでるのも聞こえる。






龍馬が泣いてるのもわかる。







「りゅ…ま………ありがと………」





私が最後に見たのは龍馬の…






泣き顔だった。















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白い雲。






青い空。






羽ばたく鳥。






足りないのは…






君の笑顔。






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風馬(匠馬)side





「おい匠馬!また書類が間違っているぞ!」






「えっ!?あ、すみません!!父さん…じゃなくて社長っ!!」





虹潮社





毎日毎日…こきつかわれる僕。



















あの日から1年…。




僕は大学に入学し、講義がない日は会社で働いてる。





それなりに充実している。





「匠馬!?時間大丈夫なのか?今日は夜用事があるとか言ってただろ。」




「あっ!そうだった!!いってきます…社長♪」






匠馬side end
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神馬(神汰)side




「神汰…お前もう、二十歳か…。」






「はい、父さん…。」





あの日から1年…。



俺は竜陰寺組組長、竜陰寺 瑛汰の付き人として大学には行かずに働いてる。





「……そろそろ、譲る。」




「……は?」



思いもよらなかった父さんからの言葉。




「そろそろ彼女でも連れてくるんだな!!」



豪快に笑う父さん…。





ブーブー…



俺のケータイが揺れる。