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龍馬 side





叫ぶ愛姫。





顔は憎しみで歪み、赤い目がさらに赤く見えた。







突然愛姫の言葉が止まる。





苦しそうに胸を抑え俺が抱き締めている身体の力が抜けていく。






愛姫の両親はその姿をただ唖然と見ていた。






龍馬「……愛姫は…ずっと独りだった。貴方たちに見捨てられ…俺らが最初に見た愛姫は………真っ暗な…光を写していない瞳だった。」






雷馬「春宮先生…すぐに来るそうです。」





雷馬が静かに言った。





雷馬「……誰も近づけない…孤独にとらわれた姫でした…。勿論、僕達も拒絶されまくりましたよ…。」




風馬「愛姫ちゃんの後ろ姿を見るたびに…消えてしまいそうだと思ったの。笑ったのも見たことないんだよ。」





神馬「でもな…やっと最近…俺らを必要としてくれるようになった。表情が柔らかくなったんだよ。」






愛姫の両親の瞳が揺れる。





龍馬「なぁ…あんたらは…愛姫が寂しいときに出る癖…わかるか?」





父「……癖!?」











母「……。」





龍馬「わかるわけないよな…あんたらは愛姫の“親”じゃないから。」






母「……!!な、なにを言ってるの…?」






雷馬「僕らはみんなわかりますよ。」





風馬「愛姫ちゃん、今も寂しいんだね…。」




神馬「本人は…気づいてなさそうだけど。」





俺の腕に巻き付く愛姫の細い腕。













ピーンポーン…ピーンポーン…







ガチャッ






春宮「愛姫っ!!」




春宮先生…カケルさんが部屋に飛び込んできた。





春宮「……どちらさん?」





母「あ、愛姫の…」




神馬「近所のやつ。」





神馬が言葉を遮る。





春宮「……はぁ、そ、それより早く!!救急車、下にあるから!!」




龍馬「今いきます…。






愛姫の癖は………





寂しい時…誰かの腕に自分の腕を巻き付ける。



じゃ。帰れっ!!」





龍馬side end
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真っ暗な世界。




久しぶりに来た気がする。





死にたくない…。




皆にお礼言わなきゃ。




龍馬に好きって言わなきゃ…。





怖い。



死ぬのが怖い…。







残された時間は…




もうないのかな…?












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龍馬side





愛姫が病院に運ばれて1週間。




紅の瞳は見てない。





ガラガラッ




雷馬「龍馬…そろそろ休んだら…?」





龍馬「……ぁあ。」




朝から夜まで…俺はここから離れることができなかった。





風馬「愛姫ちゃん、起きないね…。」





神馬「両親もあれから来ないし…。」





俺はただひたすら愛姫の目が覚めることを祈り続けた。





龍馬side end
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真っ暗な世界を彷徨う私。




雷馬…?




風馬……?




神馬……?









龍馬………












『愛姫……愛姫…』



……?



声がする。




懐かしい…





……!!




和也!!




『愛姫は生きなきゃ…愛姫には大切な人がいるでしょ?』





いるよ…。




風神のみんなに会いたいよ…。





『戻るんだ…明るい世界に戻るんだ!!』





どうやって?



真っ暗でなにもわからない。




『迎えが来る…。愛姫の大切な人が迎えに来るから………愛姫………生きろ…。』






……和也…。




ありがとう。





『バイバイ…愛姫…。』






バイバイ…和也…。












『……き………いき………愛姫っ!!』





また…どこかで声がする。





愛しの人の声が…。





『死なないでくれ…帰って来てくれ…。』






泣いてるの…?




真っ暗な世界に雨が降る。





龍馬…





泣いてるの…?











龍馬…





龍馬…






龍馬っ!!!!