「私も、麻衣に話してないことがあるの、聞いてくれる?」
香澄の声は諦めたように静かで、腕を掴んでいないと消えてしまいそうに思えた。
「うん、聞かせて。でも私が先に話すね、私、さっきの車掌さんのことが気になってる……っていうより、好きかもしれない」
恥ずかしい言葉を思いきって吐き出した。『好き』なんて口にするのも恥ずかしすぎて、言ってるうちに顔が熱くなる。
でも香澄は、真剣な目で私を見てくれている。
「昨日から……なんだよね?」
「うん、香澄に言われて声がいいとしか思ってなかったのに、昨日声を掛けてもらって……それから頭から離れないの」
香澄に促されて、胸で疼いていた思いがするすると口を突いて出る。恥ずかしいけど、ずいぶん気持ちが楽になっていくのがわかった。