遠慮がちに手を振る諏訪さんに、窓口に近い改札機を通った香澄が小さく頭を下げる。
隣の改札機を通った私には香澄の表情までは見えなかったけど、きっと笑っていたんだと思う。諏訪さんの方へと向いていたのは確か。
だって諏訪さんも、手を振りながら柔らかな笑みを浮かべていたのだから。
私たちに向かって、ではなく香澄に向けて。
駅を後にして、学校に向かって歩き出す。
急に無口になった私たちは、何となく気まずい空気を抱えてる。
どうしてだろう。
何がおかしいんだろう。
何とか、できないのかな……
「麻衣、あのね……」
考えを巡らそうとする私に、香澄のか細い声が引き止めた。