停車した電車のドアが開いて、乗降する人たちが見えた。再び発車を告げる曽我部さんの声が降り注ぎ、昨日の姿をより鮮明に思い起こさせる。


「そうか、同じ南高の人だったんだ……諏訪さんもそうだったし、ねぇ、私も顔見てみたいな、降りてから少しだけいい?」


私の抜け駆けを咎めることもなく、香澄は目を輝かせる。ようやく顔を見てみようという気になったらしいけど、私は複雑だった。


「うん、つんつんしてなくて柔らかい感じの人だったよ」

「そっかぁ……どんな人なのか楽しみ、ドキドキしてきた」


と言って、香澄が顔を綻ばせる。


私が先に見てしまったことに気を悪くしてる感じはないから安心したけど、固く噤んだ口元が何か言いたげに見えて気になった。


本当に怒ってたりしない?


問い掛けたい気持ちを抱えたまま、電車は坂代駅に到着した。