昨日までは単にいい声だと思っていた声が、何とも思ってなかった声が、こんなにも愛おしいなんて。


「麻衣? どうしたの?」


香澄が怪訝な声で問い掛ける。


香澄と立場が逆転してる。今までは香澄の方が車掌さんの声を聴いたら、こんな風にしてたのに。


自分の不自然さに戸惑ってるいると、香澄が顔を覗き込んだ。


「また、しんどくなってきた?」


心配してくれる香澄に対して申し訳なくなって、ぶんぶんと頭を振った。車掌さんの声よりも、私のことを心配してくれてる。


「香澄、ごめんね、違うの……」


いつの間にか、車掌さんの声は消えていた。しんとした車内にレールを滑る車輪の音だけがリズミカルに響いてくる。


香澄は首を傾げて、私が話し出すのを待っている。