ドアが閉まり、電車が走り出す。
ふらついて手摺りに掴まったら、ドアの窓から差し込む日差しが目に飛び込んできた。


顔を背けてドアにもたれかかると、香澄が頭を傾ける。私の肩にコツンと頭を載せて、大きな溜め息をひとつ。


「夏休みなんて、あっという間だよね……何しようって考えてる間に終わっちゃったね」


悲しそうな香澄の声に、本当に新学期が始まってしまったのだと改めて実感させられる。私もつられて溜め息を零した。


「短かったよね、やっぱり読書感想文は最後まで残ったし」

「そう、私も昨日慌てて書き上げたんだから。読書感想文の宿題は要らないよね」


頭を起こした香澄は、大きく頷く。ちょっと頬を膨らませ、口を尖らせて。


頭上から車内アナウンスが舞い降りる。次の停車駅を告げる車掌さんの声。