まっすぐ伸びた線路の向こうに、昼間なのにきらりと輝く電車のヘッドライト。その手前のホームの端に、人影が揺れている。
頭の天辺には濃いグレー色の帽子、同じグレー色のパンツに白い半袖シャツ。手に箒と塵取りを持っていて、ホームに入ってきた電車に向かって、軽く頭を下げた。
諏訪さんだ。
ホームを掃除していたんだ。
目を逸らして、ホームへと滑り込んできた電車へと向き直る。早くドアを開けてと一心に念じる胸の鼓動は、弾けそうなほど高まっていく。
ドアが開いた瞬間、電車に飛び乗って隠れるように座席に座った。
電車が走り出してほっとすると、急に体が重くなって意識が遠退いていった。