食べ終えて、そろそろ帰ろうかと話していると妹が目配せする。
「あれ、お姉ちゃんの友達? たしか……香澄ちゃんだよね?」
妹の視線を追った先には、私服の香澄がいる。誰かと話しているように見えるけど。
「うん、香澄だよ、よく覚えてるね」
「隣の人は? 彼氏? もしかして年上?」
身を乗り出してくる妹の言葉に、嫌な予感を感じた。
思った通りの光景が目に映る。
香澄の隣にいるのは諏訪さんだ。
制帽を被っていなくても、すぐにわかった。背が高くて、眼鏡を掛けていて、あの笑顔は間違いない。
諏訪さんの大きな手は?
恐る恐る視線を移す。
ぶらりと下げた手は、空を泳いでる。反対側の手はポケットの中。
少し安心したけど、並んで歩く二人は仲良さそうでカップルと呼ぶ他に疑い様はない。
いつの間に……
私は何にも聞いてないのに。
ショックでしかなかった。