危ないっ! と私が声を上げる間も無く、大きな手が伸びた。香澄のおでことカウンターの間に、諏訪さんの手が滑り込む。
一瞬のことなのに、私の目にはスローモーションのように映った。
カウンターにぶつかる鈍い音がして、
「ふぅ……危なかったぁ……」
と諏訪さんが大きく息を吐く。私もつられて息を吐いていた。
ゆっくりと頭を上げた香澄は、おでこを手で押さえて顔を真っ赤にしている。目を丸くして、何が起こったのか分かっていない様子。
香澄の見上げた先に居た諏訪さんが、にっこりと笑った。
「ほんとに、危なかったよ……もう少しでここに頭ぶつけるところだったんだから、気をつけてよ」
握り拳でカウンターを、こつんと叩いて見せる。