戻ってきた駅員さんの足取りは軽く、さっきよりも顔色は明るく晴れやかになってる。わかりやすい人なんだろう。
駅員さんの後ろから、中年の駅員さんが心配そうにこっちを見ている。制帽の周りには赤いラインが入っているから、きっと駅長さんだ。
若い駅員さんが助けを求めたのが駅長さんだとわかって、一気に安心して胸が軽くなる。
窓口に立った駅員さんは、カウンターにメモ用紙とペンを差し出した。
「乗ってた列車と各駅に連絡しておくから、定期が見つかったら連絡させてもらうよ。ここに名前と連絡先、書いてもらえる?」
「はい、わかりました」
答えたものの緊張しているのか、ペンを握った香澄の手は小刻みに震えてる。何度もペンを握り直すけど、なかなか書き出すことができない。
「香澄、大丈夫? 代わりに書こうか?」
「ううん、大丈夫、ごめん」
ふと顔を上げたら、駅員さんも心配そうに香澄を見ている。
若そうに見えるけど、いくつなんだろう。