それを見たら、私までぞくっとした。


「鞄の中に落っこちてない?」


その場で鞄を開いたり、歩いてきた通路を辿ってホームまで戻ったり、二人掛かりで探したけど定期券は見つからない。


「ヤバいかも、まだ一ヶ月分残ってたのに……あっ、そうだ、駅から出られないかも……どうしよう」


香澄が涙目になってきて、混乱している。私まで焦ってくる。


何とかしなくちゃ……


私は香澄の手を取った。


「駅員さんに話してみよう」

「あ……うん、でも何て言えば……」

「私が話すから大丈夫、行こう」


戸惑う香澄の手を引いて、真っ直ぐ改札口へと向かう。


改札口を出て行く学生の波が途切れるのを待って、駅舎の窓口に座っている駅員さんに声を掛けた。