口を尖らせて言い訳ばかりする私に健太は痺れを切らしたのか、
自転車から離れて私の目の前に立ち、力任せに頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「や……やめー!髪が乱れるっ」

「とっくに乱れてるから安心しなさい。可愛い子とか言っちゃって、焼き餅焼いてるんですか野田さーん」

「うっさい!」


はははと声に出して笑い、撫でる手を止めた。


「絶対来るよ」

「……私はザ・平均だよ?」

「知ってる。ザ・平均の野田に会いたい」


健太は笑った。

平均のという言葉が名前の前に付いたのがちょっと引っかかったが、そんなものすぐに吹き飛んでしまいそうなほど
綺麗な笑顔。

健太はよく笑う。けど、こんな笑顔は見たことがなかった。


私のための笑顔って思ってもいいかな。


毎朝一緒に見た、朝日を反射してキラキラ光る夏の海みたいに綺麗。

お調子者で、マイペースで、優しくて、大好きな、健太。