「あ……アイス。超食べたかったんだあ」

「そうかそうか、お食べなさい」


満足げに頷いて健太は私にアイスを差し出す。
私が受けとると、お互いに袋を開けて取り出す。
少し溶けかけたアイスが姿を現した。

坂を上ったところのコンビニて買ってきてここまで来たんだから無理はないかな。

溶けてツルリとした表面になったアイスは青色が強くなったように見えた。
綺麗な水色。夏の色だ。


「あのさぁ」


アイスをかじりながら健太が話を切り出した。


「野田家の駐車場って余裕ある?」

「え、余裕?……あるんじゃない?家の車は軽だし、基本お母さんが仕事に行くときに乗ってくから駐車場に車止まってること少ないし」


私が答えると健太は「そっか」と一言だけ返すと、またアイスを一かじりした。

私には健太の言葉の意図がよく分からなかった。
アイスを食べ終わると健太は自転車のカゴに入れていた荷物を取り出して、さも当然のことのように私に持たせた。

うっかり勢いで持ってしまう私もどうかと思うけど。

そして健太は自転車を家の駐車場に入れ始めた。


「ちょっと、何してんの!」

「いや、だってスペースあるんだろ、駐車場」

「あるけど!何で健太の自転車を!」


驚いて尋ねると健太ははにかんだような表情を浮かべて私から目線を反らした。


「……引っ越し先さ、駅近だし、通うの電車なんだよね」


私は話の続きを促すように何も言わないでいた。


「しかもマンションで、そんなに駐輪スペースなさそうだし……だから、預かっててもらいたいんだよね、自転車。野田に」