「ふふ。それは目印にすぎません。貴女がそう願ったおかげですぐに見つける事が出来た。何故貴女だったかと事は……そうですね、これは言わないでおきます」

「そんな……」



そこがいちばん重要なところなのに……。

うな垂れていると、「あ、そうそう」と彼は思い出したように言った。



「一年後の元旦、このうちで開かれる親戚の集まりに、ぜひ貴女にも参加してもらいたいのです」

「? それって……まさか花嫁として……じゃないですよね?」

「もちろんそうです。それに、来年の宴は千年の節目に当たります。どうか、それまでにトワと契りを交わしてください」

「契り……えええっ」


ちぎり、契り……ええっと、


ニコ!

なんて効果音が聞こえそうな程、爽やかな笑みを浮かべた正宗さん。



「ん。やっぱり藤屋さんのは美味しいですね」



小さな口に桜色のお茶菓子が次々となくなっていくのを見て、彼はきっともう何も話してくれないんだろうと思った。


「……あの、あたしはどうすればいいんですか?トワのお嫁さんになるなんて……無理です」


まだ手を付けていない自分のお抹茶を眺めながら、独り言のように言葉が零れた。


「彼を知ってください。……どうか、知らないうちから、彼を拒まないで欲しいんです」

「……」

「―――それから」


紙で口を抑えると、正宗さんはジッとあたしを見つめた。