「それはそうと……か、カナトくん。大丈夫だった?」
「へ?カナト?」
話題を変えようとカナトくんの話を出すと、爽子はすぐに引き下がってくれた。
でも、大丈夫かなとは思ってたんだ。
だって、カナトくんって爽子の事すっごく大事にしてるでしょ?
だから、修学旅行だって言っても、色々心配したんじゃないかなって。
―――チャプン
広い空間に、楽しそうな女の子の笑い声が響いてる。
クラスメイトがタオル片手に、入ってきたところだった。
それをなんとなく眺めて、黙ってしまった爽子に視線を戻す。
……爽子?
「少しはあたしと離れた方がいいんだよ。カナトは……」
「え?」
しばらく何かを考えるようにしていた爽子が、ポツリと言った。
その横顔は、いつのも爽子らしくない。
なにか、あったのかな……。
そう言えば、前にも何度か、爽子は何かをあたしに言いかけてなかった?
「カナトくんと、なにかあったの?」
顔を覗き込んだあたしに、俯いていた爽子はハッとして顔を上げた。
「あ、ごめんね真子ちゃん。……うんん。何もないの。カナトはすごく、あたしを大事にしてくれてるから……」
「うん」
えへへと笑う爽子だけど、その笑顔がいつもとは違う。
カナトくんが優しいのは、見ていてわかる。
彼にとって爽子が特別なんだってことも。
ならどうしてそんな辛そうな顔するの?
「……、真子ちゃんは、藍原くんの気持ちを重いって感じた事、ある?」
「え?」
意を決したように、爽子が顔を上げた。
その瞳は真剣で、真っ直ぐにあたしを見つめていた。