―――チャプン
京懐石を惜しげもなくあしらった、大浴場。
乳白色のお湯に浸かりながら見る、京都ならではの庭園。
京の町なかとは思えない雰囲気で、頭上には新月が上品な月明かりを灯していた。
湯けむりがたちのぼる中、あたしは思わずため息を漏らした。
「はあ……気持ちいい」
「ほんと。こんないい旅館に泊まれるなんて、こっちにお金使ったんだよね、きっと」
長い髪をお団子にした爽子が、絹のような肌にお湯をお湯をかけながら言った。
その頬は、ピンク色に上気して、色っぽい。
いいなぁ……。
爽子って、顔は文句なしで可愛いし。
それにスタイルもばっちり。
背はそんなに高くないかもしれないけど、出ることは出てますって感じだよね。
それにくらべてあたしは……。
発展途上……。おっきくなるのかな……。
そんな事を考えながら、視線を落としたその時。
爽子がクスクスと肩を揺らした。
「爽子?」
ま、まさか。あたし、声に出してた?
それとも、心読めるんじゃ……。
「でもほんと、藍原くんって人目をはばからず。だよね~」
「へ?」
何の事?
って首を捻ると、爽子が身を乗り出してあたしを覗き込んだ。
「パクッとね?食べられちゃいそうだったんでしょ? くちびる」
「え?」
そう言った爽子の指先が、チョンとあたしの口元に触れた。
はっ! さっきの……。
ボンって顔が熱くなり、ブルブルと首を振った。
「ち、違うの!……あれは」
「違うってなにがぁ?溶けちゃいそうなくらい見つめ合ってたーってうちのクラスでも話題沸騰だったよ?」
「も、もう!爽子っ」
否定すればするほど、墓穴掘りそうで、やめた。
お湯に浸かり直し、爽子をチラリと見る。