ひゃあああ。
こっ、ここ、廊下なんですけどー!
お食事終えた、他の客さんもいるんですけどー!
何とかこの腕の中から逃れようと身をよじる。
でも、逃がさないと言うようにさらにギュッとその腕に力がこもる。
「ちょ、ちょっとトワ……」
「ヤダ」
「え?」
や、やだ?
頭の上で聞こえるその声に、一瞬たじろぐ。
「やだって、何が?」
「お願い真子、総司朗には言わないで」
へ?
そ、総司朗さん?
キョトンとして、あたしを抱きすくめるトワを仰ぎ見た。
「だってトワ……こんなに熱い。やっぱり体調悪いんでしょ?」
「平気だよ。少し熱っぽいだけ」
「でも……」
「お願い」
う……。
肩口にトワの息がかかり、ゾクリと背中に電気が走った。
そんなふうにお願いされたら……あたしが言い返せないの、知ってるくせに。
上目づかいで覗き込まれ、間近で見るトワに胸がドキンと跳ねた。