「ど、どうして無視したりするの?」

「……え?」


キョトンと目を瞬いたトワ。

言って後悔した。
だって、凄く小さなことだもん。
でも……小さなことだとしても、哀しかったんだもん。


「……えっと、無視って、俺が真子を?」

「……う、うん」


綺麗な顔を歪めたトワ。それはとっても不服そうだった。
でもすぐに、はあとため息をもらし、だるそうに壁に寄り掛かった。


「そんなハズないよ。真子にそんな事しない」

「……」


そんなふうに断言されても……。
コツンと頭を壁にもたげたトワ。
その頬は、バラ色に染まり、あたしをジッと見つめる蒼穹の瞳は、熱っぽく潤んで……。



……って!


「と、トワ!熱ある?」

「へ?」


バッとトワの頬に触れた。

あ、熱い……。


だから、今日ぼんやりしてて。
あたしにも気付かなかったんだ……。

体調悪かったから……。

なんだか泣きそうになって、トワの手をギュッと握る。


「行こう!」

「? どこへ……」

「総司朗さんのこと!」


踵を返して歩き出したあたし。

でも、その手をトワは引き戻し、背中からあたしを抱きすくめた。


……え?