そんな静音に、裕也はいつも悶々とした気持ちだった。

(この気持ちがなにかはわからない。だが静音のすべてを手に入れたい!)



その貪欲な気持ちが
ある日あふれ出てしまうこととなる。








  *――*――*――*










「失礼いたします」

控えめな「お客さま」と障子の向こうから言う静音に、裕也は「どうぞ」と声をかけると
障子を開けた静音の後ろから仲居さんたちが料理を運んできた。



彼女たちが運んできたのは本格的な日本料理で、どれもよだれがたれそうな程美味しそうだ。



そして仲居さんたちが部屋を出ていくと
裕也は静音を呼び止めた。

「どうだ。一杯やらないか?」

その誘いに対して静音は
「おおきに。けどまだ仕事が残っておりますので。」

ときっぱりと断り、
ふと気付いたように付け足した。
「お酌なら喜んでさせてもらいます」