すると、しばらく沈黙が流れた。


日向は泣いているのだろうか。
小さな身体が小刻みに震えている。


が、


「誰が泣くかバーカ。あたしはそんな弱い魂じゃねーよ。」


ペシッ


「…おい。」


そう言って、俺の手を払いのけた。
…その手には全く力がかかってなかったが


まぁ続けるぞ、と日向。


「あたしのお父さんとお母さんは一族の長でもあった。だから仲間と一緒に最後まで戦った。」


「…結果、妖狐たちは全員殺られてしまった。そして、あたしの一族、白狐も。
お父さんもお母さんも。」


本当は…、と続ける日向。


「あたしも死ぬ運命だった。
けど、お父さんとお母さんが最後の妖力であたしを逃がしたんだ。お前は俺たちの希望だ、ってね。」


「そして、命からがら逃げてきたのが
此処、京だ。世間では、白狐は絶滅したと言われてる。でも、あたしは生き残ってしまった。


…本当は皆と一緒に逝きたかった。
けど、お父さんとお母さんが必死に守ってくれた命だ。だから、あたしは意地でも生きてやる。」