「もちろん、妖狐達は人間相手に必死に戦った。けど、妖術を使ったとしても
所詮はまやかしだ。それを知った上で人間は襲ってきたから、勝ち目なんてなかったんだ。」


けど…、と続ける日向。


「あたしの一族は、妖狐の中でも一番妖力が強かったから、最後まで戦った。
…あたしのお父さんもお母さんも。」


微かに日向の声が震える。


「あたしはまだ幼くて、戦えずにただ仲間が次々狩られていくのを見てる事しか出来なかった…っ」


きっと、日向は今泣くのを堪えてる。


今まであんな強気で負けず嫌いの日向が、こんなに弱いところを見せたのは初めてだ。


俺は日向の頭に手を置き、
そっと撫でた。


「…!?」


「おら、泣くんなら泣け。
…話すのはその後でもいいから。」


本当は抱きしめてやりたかった。
狐の姿だってのもあるが、
今の日向は何処か儚くて、
俺が抱きしめたらすぐに壊れてしまいそうだった。